おはようございます。アドラー心理学に基づく勇気づけの研修(外部研修も)とカウンセリングを行う ヒューマン・ギルドの岩井俊憲です。
「忖度(そんたく)」というあまり聞きなれない日本語がテレビや新聞で頻繁に触れるようになりました。
『広辞苑』で引いてみると、「他人の心中をおしはかること」とあります。
事の発端は森友学園が不動産鑑定士の評価額9億5600万円の大阪府豊中市の8,770平方メーターの土地を財務省理財局から埋まっているゴミの処理費用と称して8億2,200万円値引きして1億3,400万円で払い下げたことに始まります。
森友学園は既に払ったゴミ処理代1億3,200万円を差し引くと、土地を200万円で取得したことになり、その上、森友学園には国土交通省から補助金として6、000万円が出たことも明らかになっています。
籠池理事長の直談判を財務省理財局が自らの判断で受け入れてしまった背後に、籠池理事長が安倍首相と「近い関係にある」と思い、安倍首相の意向を「忖度」して理財局の判断だけで話を通してしまったとの推測がなり立ちます。
安倍首相自身は、国会で「私や妻は一切関わっていない。もし関わっていたら間違いなく、首相も国会議員も辞任するということを、はっきり申し上げる」とまで断言しているのに加えて、籠池氏の国会証人喚問発言で100万円寄付問題まで出てしまっただけに、重要案件を尻目に野党は鬼の首を取る勢いで政局にしています。
私はこの事件にからむ「忖度」から次の2つのことを連想しました。
1.山本七平の『「空気」の研究』
2.アドラー心理学の立場からの(1)承認欲求と(2)同調圧力
山本七平の名著『「空気」の研究』(文春文庫)によれば、「空気」とは「教育も議論もデータも、そしておそらく科学的解明も歯が立たない“何か”」であり、「非常に強固でほぼ絶対的な支配力を持つ『判断の基準』であり、それに抵抗する者を異端として、『抗空気罪』で社会に葬るほどの力を持つ超能力であることが明らか」だとしています。
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「空気」の研究 (文春文庫 (306‐3)) |
| 山本 七平 | |
| 文藝春秋 |
日本人には二重基準(ダブル・スタンダード)があって(1)論理的判断の基準にもとづく論理・データと(2)空気的判断の基準が拮抗すると、「空気が許さない」として空気的判断が決断の基準となっていることも併せて指摘しています。
「忖度」という言葉をマスコミが使い始めると、絶対的な支配力・影響力を持つ空気として、「忖度」があたり前の事実であるかのように伝播し、庶民も信じてしまいます。
今度は、アドラー心理学の立場から見た「忖度」についてです。
ここでは(1)承認欲求と(2)同調圧力が支配する原理になります。
関係官僚は、支持率が高く、長期政権が見込まれる安倍首相には気にいられたい、周囲とは違ったことができにくい、という理由から「忖度」が始まったのかもしれません。
それでは、「忖度」という「空気」から私たちがいかに自由でいられるか?
私は、自分軸を持った半異端児であることをお勧めします。
それには第1に、一方側の論調に染まらないことです。
森友学園問題に関して、私たちは当事者でもなければ、処罰する立場でもないのです。
傍観者でありながら正義ぶるとろくなことはありません。
まさに同調圧力の渦中に入って自分軸を失いがちになります。
第2に、論理的判断の基準を持つことです。
肝心なことは、「忖度」という意見を判断基準にすることなく、「事実は何か」にだけフォーカスすることです。
この2つの心構えを持つ限りは、「忖度」やら「空気」から自由でいられ、周囲からはやや変わった人だと見なされながらも自分軸を持ち続けられる半異端児でいられるはずです。
<お目休めコーナー>3月の花(27)

