おはようございます。ヒューマン・ギルドの岩井俊憲です。
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アドラー心理学 シンプルな幸福論 (ベスト新書) 岸見 一郎 ベストセラーズ このアイテムの詳細を見る |
KKベストセラーズから前作の『アドラー心理学入門』に続き岸見一郎さんの新作が出ていることを知って、早速購入し、一気に読みました。
『アドラー心理学 シンプルな幸福論』(743円+税)
岸見さんは、私にとって昔の知人ではありますが、長らくお目にかかっていません。
彼は、2006年の春、突然、心筋梗塞で生死の境をさまよい、最近ではアルツハイマーのお父様を介護して1年半に及んでいるようです。そのことで前作から比べると、内容に格段の深みが加わったようです。
とりわけ岸見さんの深みは、この本の第4章「老い、病気、死との向き合い方」、第5章「毎日の中にある、幸福になるための発見」で顕著です。
たとえば、病気から回復することに関してこんなことを書いています。
「完治したとしても、ただ元に戻るのではなく、病気になることで、それ以前には気づいていなかったことを知ること、人が病気になることは避けられないことを知るということ、そのことによって、病後は、それ以前とは違ったふうに人生が見えてくることが回復することの意味だと思うのです」
このことは、私が『心の雨の日の過ごし方』(PHP研究所)で書いた「老いは成長のプロセス」の考えと同じで、病後の回復もまた、以前の状態に戻ることでなく成長のプロセスだ、とも受け止めることができるのです。
また、岸見さんは、ギリシア哲学者らしくアリストテレスの「キーネーシス(動)」と「エネルゲイア(現実活動体)」を対比しています。
ちなみに、「キーネーシス(動)」というのは、目的地に至る行動のような始点と終点のある動き、「エネルゲイア(現実活動体)」というのは、たとえばダンス。今「なしつつある」ことが「なしてしまった」ことであるような、目的に向かわない動きです。
このことから岸見さんは、次のような病気観を説いています。
「病気になると明日は、今日の延長でなくなります。当然くると思っていた未来がなくなってしまうのです」
そして、この「エネルゲイア(現実活動体)」としての生き方を第5章の「毎日の中にある、幸福になるための発見」でもかたちを変えて繰り返します。
「明日を今日の延長にしないで生きるためには気迫がいりますが、そのような生き方こそ、先に見たエネルゲイアとしての生き方であるといえます」
そう、私は適切な言葉が浮かばないでいましたが、「生きるための気迫」がみなぎっているのが、死の恐怖と戦った病後の、さらには、父君およびご自身の老いとも直面する岸見さんの姿そのものです。
アドラー心理学のことを書かないでいましたが、前半の第1章「アドラー心理学を理解するための基礎知識」、第2章「幸福になるための自分との向き合い方」、第3章「幸福になるための他の人との向き合い方」も、より深みを増した内容になっています。
少し遅れたタイミングで『アドラー 人生を生き抜く心理学』(NHKブックス、1,000円+税)も発売されます。
また、岸見さんは、4月28日の朝日新聞の夕刊でインタビュー記事が出るようでもあります。
(注)①岸見さんの本は、ヒューマン・ギルドで取り扱っています。ご注文ください。
②ヒューマン・ギルドの5月度のニュースレターにもほぼ同じ内容で掲載します。
<お目休めコーナー> ご近所の公園で

