おはようございます。アドラー心理学に基づく勇気づけの研修(外部研修も)とカウンセリングを行う ヒューマン・ギルド の岩井俊憲です。
『勇気はいかに回復されるのか』(A.アドラー、岸見一郎訳・注釈、2,000円+税)をお勧めします。
![]() |
勇気はいかに回復されるのか (アドラー・アンソロジー) |
| Alfred Adler,岸見 一郎 | |
| アルテ |
『勇気はいかに回復されるのか』は、同じアルテ発売の『性格はいかに選択されるのか』に続くアドラー・アンソロジー・シリーズの第2弾です。
訳者兼注釈者の岸見一郎さんとアルテの市村敏明社長のコンビによって、アドラーの本が続々出版されています。
![]() |
性格はいかに選択されるのか (アドラー・アンソロジー) |
| Alfred Adler,岸見 一郎 | |
| アルテ |
できれば、2冊まとめて読むことをお勧めします。
さて、『勇気はいかに回復されるのか』は、アドラーの本から「勇気」に関して書いている部分を抜き出し、岸見さんが注釈を施したものです。
アドラーの原書を読んでみるとわかりますが、アドラー自身は、「勇気づけ(encouragement)」をほとんど使っていません。
その証として、アドラーの著書・論文をもとに編纂・注釈を施したアンスバッハー夫妻による“individual Psychology of Alfred Adler” の索引には、“encouragement” があっても、該当の項目がほとんどありません。
![]() |
Individual Psychology of Alfred Adler (Torchbooks) |
| Alfred Adler | |
| Harper Perennial |
それでも、岸見さんは、次のとおり章立てすることによって、アドラーの理論と実践が勇気づけそのものであることを構成してくれました。
第1章 失われた勇気
第2章 勇気とは何か
第3章 勇気のくじき方
第4章 勇気づけの方法
第5章 カウンセリングでの援助
ただ、いいことだけ書いておきたくありません。
岸見さんの引用と訳で気になることがあります(この本のP.15)。
1.「勇気があり、自信があり、リラックスしている人だけが、例外なく対人関係の問題である人生のあらゆる問題に対して準備ができている」(『個人心理学講義』 P.16)
おや、と思って『個人心理学講義』を開いてみたら、「勇気があり、自信があり、リラックスしている人だけが、人生の有利な面からだけではなく、困難からも益を受けることができる」でした。
2.「勇気があり、自信があり、リラックスしている人だけが」という訳し方も以前から気になっていました。
英文の原典を調べてみると、次のとおりです。
“Only people who are courageous, self-confident, and at home in the world can benefit from both the problem and the advantages of life.”
確かに“be at home”には、「くつろぐ」の意味がありますが、私は「リラックス」の訳には違和感を覚えます。
この文章の中では「世界の中で居場所がある」 ― せめて「世界の中でくつろいでいる」 ― と訳したほうがいいのではないか、とのこだわりを持っています。
ペルグリーノ博士が7月末に来日されたらお尋ねしてみようと思います。
あるいは、英語に堪能な方、教えてください。
<お目休めコーナー> 3月の花(2)



